換気をするため、ショウくんの部屋に入って窓を開ける。
外出中、いつもそうしていたように、ドアは開け放ったままにしてある。
ニ架の本棚では足りなくて、床にも積み重なった書籍。
ベッド、洋服、趣味だった釣りの道具、沢山のものが静かにじっとしている。
キッチンに立てば寂しげな、ショウくんの食器やお箸。
ショウくんのものはみんな揃って、主の帰りを待っている。
あんまり待たせちゃかわいそうだよ。
もうそろそろ、帰ってきてあげたら?
換気をするため、ショウくんの部屋に入って窓を開ける。
外出中、いつもそうしていたように、ドアは開け放ったままにしてある。
ニ架の本棚では足りなくて、床にも積み重なった書籍。
ベッド、洋服、趣味だった釣りの道具、沢山のものが静かにじっとしている。
キッチンに立てば寂しげな、ショウくんの食器やお箸。
ショウくんのものはみんな揃って、主の帰りを待っている。
あんまり待たせちゃかわいそうだよ。
もうそろそろ、帰ってきてあげたら?
もしかしたら見えてるかな?家の周りの景色も、ショウくんがいたころとは随分変わった
よ。あんなに高い木が沢山あった林は、住宅地になって広い空が見える。よく二人で一緒
に行った家電量販店にはスーパーマーケットが併設されて賑わってるよ。
現実の時間は止まることなく確実に過ぎていくけど、お母さんの心の時間は、ときどき
ショウくんがいた頃へ後戻りする。
あの頃が懐かしいな。いろんなことがあったけど、やっぱり一緒に居てほしかったよ。
一緒じゃなくてもいい、せめてこの地球のどこかに居てほしかった。だって、天国は
あまりにも遠いんだもの...
これからもお母さんは、心の時間を行ったり来たりしながら、ショウくんがいないこの
世界で生きていかなきゃ。
ショウくんが天国に旅立ってから2年1ヵ月、
一人旅が好きだったショウくん、どうして天国行きの列車に乗ったの?
中学3年生の時から、春休み、夏休み、冬休み、いつも「青春18きっぷ」を2枚も使って
今はもう廃止になった夜行列車「ムーンライトえちご」で、新宿から新潟、北上して
青森、そして、大好きな北海道へ行っていたね。寝袋を入れた大きなザック背負って、
登山靴履いて、意気揚々と出掛けていたっけ。
久しぶりに旅の写真見せてもらったけど、とっても綺麗に撮れてるね。一人旅だから、
ショウくんはほとんど写ってないけど、ローカル線の列車や秘境駅、自然の景色も沢山
あって、改めて「こういうところに行ってたんだ」って思いながらしみじみと見ちゃい
ました。ただ、周りには何にもない田舎の駅に、ひとりで泊まる事の何が楽しいのか
お母さんにはさっぱりわからなかったけど。
あの頃の元気なショウくんのまま、時が過ぎて欲しかった。
25歳になったショウくんに逢いたいな。