最寄りの駅から息子は旅立ってしまった。
三ヶ月程たったころ、やっと駅に行くことができた。
プラットホームを端から端まで歩いてみる。
涙はこぼれたけれど、
不思議と怖さは感じられなかった。
きっと真っ直ぐ天国に昇って行ったんだろうな。
あんなに心根の優しい息子のことだもの。
そう思えた。
乗降客の多い駅だからお花もお線香もお供えできなかった
けれど、本当はそうしてやりたかった。
今でも駅のプラットホームに立てば必ず息子に
話しかける。
どこから、どの場所から、天国にいったの?って。
だけど、息子が心の病で十八歳から亡くなるまでの五年間
通った病院がある駅には今も行くことができない。
いつも病院の送迎バスを待った駅。
ときには駅から歩いたこともあったっけ。
あの頃を思い出すと今でも涙が溢れる。
二人で通ったあの五年間はなんだったの?
なんで治らなかったの?
辛かったよね。
治してあげられなくてごめんね。
後悔ばかりが浮かんでくる悲しい駅。
この先
どんなことがあっても、
あの駅には行けない。
あの駅には行かない。